2020年の東京五輪に向けて、注目されていたのが「スポーツビジネス」という産業です。ところが、昨今の新型コロナウィルスの影響でスポーツビジネスが属する「娯楽・エンタメ」という産業は大打撃を受けています。本記事では、「スポーツビジネス」について、産業の全体観や課題、特徴など多面的に解説していきます。
今回は割とボリュームが多いので、お時間がない方は興味のある項目から読んでいただければと思います。もしよかったら、感想や取り上げてほしいトピックなどTwitterで書いていただけると嬉しいです!
- スポーツビジネスとは ~どこまでがスポーツビジネス?~
- 「する」「みる」「ささえる」で考えるスポーツビジネスとは
- スポーツビジネスの市場規模
- スポーツビジネスモデルの変遷
- スポーツビジネスの特徴とは?
- 収益構造 ~toBとtoCが混在する~
- スポーツビジネスとは ~3つの関わり方を整理する~
- スポーツビジネス界に新卒で飛び込むことの是非
- スポーツビジネスとの関わり方は、ひとつではない
スポーツビジネスとは ~どこまでがスポーツビジネス?~
スポーツ庁が分かりやすい図解を出してくれています。
スポーツ庁 Web広報マガジン|スポーツビジネスイノベーションが生み出す新たな価値 ~「スポーツ×IT」のポテンシャルとは?~
スポーツビジネスとは、「スポーツに関連したビジネス」であれば何でも当てはまります。スポーツを通じて何か価値を提供し、収益を得ていればすべて「スポーツビジネス」といえます。イメージしやすい、プロ野球やJリーグなどプロスポーツチームに関わる仕事や、アシックスやナイキなどスポーツ用具のメーカー、一般の人も通うフィットネスジムなどはスポーツビジネスに該当します。
近年では、スポーツビジネスを支える高度なテクノロジーが導入されています。「データスタジアム」のようにデータ分析を通じて球団やチームのパフォーマンス向上、あるいはファンが楽しめるコンテンツを提供する会社もあれば、大手通信キャリアが5Gの活用を通じてスポーツビジネス領域に参入している例もあります。その他放映権やチケッティング、グッズやスタジアムの飲食など、「スポーツビジネス」といってもその周辺には非常に広い領域があるのです。
※具体的なスポーツビジネスへの関わり方については後半で触れています。
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スポーツビジネスとスポーツマーケティングの違いは?
スポーツ産業に関心のある人がよく耳にする言葉として「スポーツビジネス」に加え、「スポーツマーケティング」もあると思います。この2つの関係についてざっくりいえば、「スポーツマーケティング」は「スポーツビジネス」に含まれるイメージです。従って、「スポーツビジネス」の方が広い概念です。
「スポーツマーケティング」については、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はご覧ください。
「する」「みる」「ささえる」で考えるスポーツビジネスとは
「スポーツビジネスとは」を考える切り口のひとつに「する」「みる」「ささえる」で分けることです。詳細は別記事に譲りますが、プロスポーツ興行を「みる」というコアな市場から「する」「ささえる」という市場に広がるイメージを持っておくとよいでしょう。実際、スポーツビジネス市場において「興行」そのものが占める割合は非常に低く、一方でプロスポーツ興行がなければ残りの大半の市場に派生しない、といった点を解説しています。
スポーツビジネスの市場規模
日本のスポーツビジネスの市場規模は2012年に約5.5兆円でした。スポーツが持つ特質である「夢」や「希望」などは他産業ではなかなか見られない稀有なもので、モノや機能が満たされた現代において、「心」を豊かにする成長産業として期待されています。
事実、2015年にはスポーツ庁が設立され、スポーツ産業は政府が掲げた「日本再興戦略」のひとつにスポーツ産業の成長を促進する事業が組み込まれています。
2025年に市場規模を約15兆円まで拡大させるという目標も掲げており、スポーツ庁が媒介となってオープンイノベーションを推進する取り組みなども行っています。
期待されていた東京五輪もコロナの影響で不透明になっており、目標達成に向けては長い道のりではありますが、一つ言えるのは、今後人口減少が見込まれる日本において成長が期待されている数少ない産業がスポーツビジネスである、ということです。
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今後のスポーツビジネスの課題
政府による大きな目標が立てられており、強化すべきポイントもある程度明確になってはいますが、それらをどのように具体的に実現させていくか、これがまだまだ不明瞭であり、数字が独り歩きしているのが課題といえます。
特に、スポーツビジネスの産業としての発展に際して課題と指摘されているのは「スポーツ経営人材」の不足です。プロ野球やJリーグといった日本のプロスポーツビジネスのトップは別として、その他の多くのスポーツ団体において、スポーツの価値を活用してマネタイズ(収益化)できるプロが少ない、といった課題が挙げられています。これに加えて一般企業側でも、自社の事業とスポーツビジネスを絡めて企画したり収益化したりとできる「プロデューサー」的な人材も、もっと必要とされています。
これらはスポーツビジネスの「人材」に関する内容ですが、「文化・風潮」の面も課題として外せません。より具体的にいえば、特にアマチュアスポーツにおいて「稼ぐ=悪」というイメージがまだ残っている側面もあり、大学スポーツでスポンサーをつけづらいなどの事象が発生しているようです。昔ながらの「体育」の名残がスポーツビジネスに影を落としている側面は否定できないでしょう。
気になる収益構造は?
参考になるデータとして楽天イーグルスの2017年の数字を見ると
- チケット収入:34%
- スポンサー収入:27%
- グッズ販売収入:12%
- 放映権収入:11%
- その他:16%
といった内訳になっています。
参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/213971?page=2
一方、MLB球団の収入内訳を見てみると、以下のようになっています。
- チケット収入:30%
- スポンサー収入:11%
- 放映権収入:50%
- 飲食/グッズなど:9%
大きな違いは、やはり放映権収入の占める割合です。
参照元 http://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=002-20200629-33
日本のプロスポーツビジネスの現状
日本のスポーツビジネスの中核であるプロスポーツビジネスについて、プロ野球・Jリーグ・Bリーグの3つの事例を簡単に触れてみます。
・プロ野球
まずは、日本のなかでも根強い人気を誇るプロ野球です。年間各12球団が70試合程度のホームゲームを行うなかで、観客動員数が合計で約2,500万人にも到達します。平日含めた平均で3万人前後も動員するスポーツやエンタメのコンテンツは他にないのではないでしょうか。
よく「野球界はばらばらだ」と言われることもありますが、一方で各球団がビジネス面を含め工夫して新しい取り組みをしており、これがうまくいっている面もあります。数字的には、差はあれど各球団年間で100億円から200億円程度の売上があり、かつての親会社頼みのビジネスモデルから、黒字経営に転換してきている球団も増えています。
・Jリーグ
Jリーグもプロ野球と並ぶ大きなプロスポーツリーグです。地域に根差したクラブをモットーに、当時のプロ野球を反面教師にして創立され、その後もアップデートされながら今に至ります。
プロ野球との大きな違いは、リーグを中心に各クラブが経営面でも親会社依存ではなく自立していることが前提となっているなど、綿密なリーグ設計がされています。象徴的なのは、DAZNとの大型の放映権契約で、この恩恵が各クラブに還元されます。リーグとしての売上は年間1,000億円を突破しています。
・Bリーグ
Bリーグは設立からさほど時間が経っていませんが、すでにプロ野球やJリーグに次ぐ規模を誇るプロスポーツリーグです。バスケットボールのトップリーグが分断されていたところから、国際連盟からのペナルティもあり、今のBリーグとして創立になりました。
大きな特徴としては、放映権やスポンサーシップなどの権益をリーグで統合している点、若者をターゲットにデジタルを駆使したマーケティングを大々的に展開している点です。スポーツビジネスのなかでも、プロスポーツの設立と成長という面では国内で最もベンチマークにできるリーグといえるでしょう。
約5年でリーグ・クラブ合わせた事業収益は300億円を突破しており、今後の更なる成長が期待されてます。
アメリカと比較した日本のプロスポーツビジネスの課題
日本のプロスポーツのなかでもメジャーな3つのリーグについて紹介しました。アメリカでは「4大リーグ」ともいわれるNFL・MLB・NBA・NHLが大きな収益を挙げていますが、これらとの違いを考えてみると、日本のプロスポーツビジネスの伸びしろが見えてきます。
ポイントをひとつ挙げるとすると、各プロスポーツの開催時期です。日本では、たとえばプロ野球とJリーグのシーズンは大体被っています。バスケットボールは冬にも開催されています。一方、アメリカのプロスポーツビジネス、なかでも4大リーグのシーズンは基本的に被らないようになっており、全米のスポーツファンが各季節に異なるプロスポーツを堪能できるのです。
スポーツファンのカニバリゼーションが起きず、結果として各プロスポーツリーグの放映権やスポンサーシップ権などが高額で取引できます。日本の場合、野球離れの議論にも通ずるところですが、「スポーツ」を「する」にしても「見る」にしても「どれかひとつ」が前提になっている感じがありますが、この点はアメリカ全体のプロスポーツビジネスに目を向けると、まだまだ改善点が見えてくるかもしれませんね。
野球離れについては別記事でも触れていますので、ご覧ください。
スポーツビジネスモデルの変遷
「スポーツビジネス」という言葉自体は、割と近年広く言われるようになりましたが、そのビジネスモデルは1984年のロス五輪が発端であるとされています。そして、スポーツビジネスモデルは時代とともに変化しており、以下の記事も参考に整理してみます。「スポーツビジネスとは」という問いがどのように変化してきているか、大枠がつかめるのではないでしょうか。
出典:「企業がスポーツを「使う」時代へ スポーツビジネス進化の行方」
スポーツビジネス1.0とは
当初のスポーツビジネスモデルは、1984年のロス五輪において確立されたビジネスモデルのなかでも「メディア」としての側面が中心でした。試合中継というコンテンツをメディアを通じて多くの人に観戦してもらうことで、ライトなファンを増やし、コンテンツの広告価値を大きくすることに焦点が当てられていました。日本でいえば、毎日のように巨人戦の中継が地上波で放映されていましたが、これは放映権というメディアと通じた収益に大きく依存していた表れでもあります。
スポーツビジネス2.0とは
インターネット技術などの進展で、テレビ離れも進んできたころ、従来のメディア中心としたビジネスでは厳しくなってきました。そこで、テレビ中継をはじめとした放映権に依存せず、自チームのスタジアムを満員にして、地元を中心としたコアファンを増やして収益化するモデルへの転換が図られるようになりました。これが球場と球団の一体経営が増えている背景でもあり、「指定管理者制度」などの形で球場・スタジアムの事業権を球団が握り、収益を拡大しています。
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スポーツビジネス3.0とは
スタジアムを起点としたスポーツビジネスは非常に伸びていますが、一方でスタジアムという「箱」には当然ながらキャパシティの上限があるため、天井が見えています。実際、近年のプロ野球人気は伸びている一方、さらなる観客動員数の伸びは見込みづらいのが実情です。そこで近年注目されているのが、スポーツを「活用」するという視点です。ケースバイケースで明確なモデルがあるわけではなく、他産業との連携(=かけ算)を通じて新たな価値を創造する取り組みです。スポーツを媒介として、社会課題の解決や企業にとっての価値などを再考していく動きが期待されています。
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スポーツビジネスの特徴とは?
上記のような変遷をたどってきたスポーツビジネスの特徴について解説します。
「営業日」が非常に少ない
球団・クラブやリーグ、協会などにとって「営業日」とは、実質ホームで試合が行われる日です。リーグからの分配等を抜きに考えると、試合を開催する際のチケット収入や物販等はホームゲームでしか自チームに入らないからです。プロ野球でいえば年間で70試合程度、Jリーグでは20試合未満しか「営業日」はありません。
もちろん、フロントの職員等はホームゲームを起点とした収益を最大化させるために放映権やスポンサーの交渉・獲得等をオフシーズン含め行っているわけですが、本当の意味での「営業日」の少なさはスポーツビジネスの大きな特徴といえます。
相手チームは「競合」でもあり「同僚」でもある
スタジアムや球場に観戦に行ったり、試合中継を見て楽しんだりするファンは何に惹かれて余暇の時間をスポーツ観戦に投下しているのでしょうか。色々とあるでしょうが、その根源にあるのは「ライブ性」と「ドラマ性」です。ライブ性と重なる部分もありますが、特に「何が起こるか分からない」というドラマ性が「エンタメ」としての最大の価値です。
とすると、試合前からどちらが勝つが分かっているような試合は価値が低いわけで、リーグ内のチームの力が「均衡」していることが重要です。アメリカでは、資金力によらず「均衡」をできるだけ保てるようなルール設計(贅沢税やドラフトの制約など)を設けているのもその表れです。本ブログでも、リーグガバナンスがスポーツビジネスに及ぼす影響の大きさは度々解説しています。
リーグガバナンス - スポーツビジネスを勉強できるマーケティングブログ
ライバルチームは確かに「競合」でもあるのですが、そのスポーツの発展や試合の「価値」を高めるうえでは「同僚」としての側面もあるのです。「ライブ性」の観点でいえば、「試合」という商品の中身は事前に分からないのも特徴で、戦う2チームが競いながらリアルタイムで作り上げていきます。
<リーグガバナンスについて学ぶ書籍>
収益構造 ~toBとtoCが混在する~
スポーツビジネスの収益は4つの柱からなっています。復習すると
- チケット収入
- 放映権収入
- グッズ/物販収入
- スポンサー収入
の4つになります。この4つの柱についての詳細は以下の記事も参考にしてみてください。
<チケット収入>
チケッティング戦略① - スポーツビジネスを勉強できるマーケティングブログ
チケッティング戦略② - スポーツビジネスを勉強できるマーケティングブログ
<放映権>
放映権料について:プロ野球とMLB ~日米のメディア環境の違い~ - スポーツビジネスを勉強できるマーケティングブログ
放映権とは ~定義について素人なりに解説~ - スポーツビジネスを勉強できるマーケティングブログ
<グッズ・物販>
グッズ販売ビジネスについて - スポーツビジネスを勉強できるマーケティングブログ
<スポンサーシップ>
露出目的だけのスポンサーシップはもう時代遅れ? - スポーツビジネスを勉強できるマーケティングブログ
BtoBとBtoCで切り分けて考える
4つ以外にも、例えばファンクラブでの収益などもありますが、ここではこの4つについて考えます。スポーツビジネスといえば、ファンあってのものでファンからお金をいただくイメージが多いかもしれません。しかし、金額でいえば法人向けビジネスの方が大きかったりします。この視点で4つの柱について見てみましょう。
・チケット収入:BtoCおよびBtoBおよびBtoBtoC
近年は球団がフロントになってチケットを販売するケースが増えていますが、従来はチケッティング会社を介して行っていました。また、VIP席をはじめとした高額な席を法人向けに販売し、企業が福利厚生などで活用することもあります。
・放映権収入:BtoBtoC
放映権は放送局やOTT業者などの企業に販売する意味ではBtoBですが、その先にファンあってのものなのでBtoBtoCといえます。コンテンツを直接届けるのは放映権の購入者ですが、コンテンツの素材をコントロールするのは球団が大きな割合を占めるでしょう。
・グッズ/物販収入:BtoCおよびBtoBtoC
球団の素材をライセンスとして提供してその先のファンに届けるか、球団自らが自前でハンドリングしてファンに販売するか、のいずれかが主流でしょう。
・スポンサーシップ:BtoB
スポンサーシップは基本的にBtoBに分類できます。広告枠のみで考えると頭打ちになってきていますが、アクティベーションという新たな形が広がりつつあります。スポンサーシップ枠の購入だけでなく、その活用を戦略的に考え、予算も確保する(してもらう)ことが重要になっています。
<スポーツビジネスの基本を学べる一冊>
スポーツビジネスとは ~3つの関わり方を整理する~
「スポーツビジネス」とひとことに言っても、漠然としたイメージで留まる場合も多いと思います。スポーツに関わる産業といっても、「プロスポーツはビジネスとしてお金稼いでいるな」といったイメージが強いかもしれません。しかし、いわゆる「スポーツ界」に所属しなくても、「スポーツビジネス」は展開できるのです。
スポーツマーケティング会社の分け方を参考に、解説してみます。
スポーツチームや団体のなかでスポーツビジネスに従事
まずは、もっともイメージしやすいスポーツチームやリーグ、団体のなかでスポーツビジネスに従事する関わり方です。プロ野球の球団職員などが分かりやすい例です。そこでは、
- いかにチケットを売るか、チケット単価を高めるか
- 放映権による収益を高めるとともに、自チームの中継をより多くのファンに届ける
- スタジアムに来てくれたファンを楽しませる企画を考える
- スタジアムに来てくれたファンが飲食や物販にお金を使ってくれるよう商品を設計する
- 選手の素顔を多くのファンに届ける
など、直接的にスポーツビジネスに関わるさまざまな仕事があります。この場合に共通していえることは、チームにしてもリーグ等の団体にしても、基本的に規模としては小さい組織で、いわゆる「中小企業」であると考えるとよいでしょう。よって、人数が少ないなどで担当する業務の幅は一般的な企業より広いでしょうし、さまざまな変化に対応していける柔軟性も含め求められるでしょう。
最近の動向として個人的に注目しているのは、SNSの普及で従来のマスメディアを通した露出ではなく、選手の素顔や練習風景などをコンテンツ化し、SNS等を通じてファンに届けていく「広報」の手腕です。元選手による独自のコンテンツも出てきており、1ファンとしても楽しみにしています。
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<球団経営について学べる書籍>
スポーツの価値を高めるテクノロジーやサービスを提供する
スポーツビジネスの根本となるのは、やはりプロスポーツチームをはじめとする事業者です。しかし、それだけでは多くのスポーツビジネスが成立しません。たとえば、スタジアムに行かずとも好きなチームの試合を観戦できるのは、DAZNや放送局など試合を中継してくれる事業者がいるからです。これによって、チームだけでは届けるのが難しい層にまで、自チームのコンテンツをリーチさせることができます。
放映権まとめ
チケッティングについても同様で、球団が単体で自チームの観戦チケットを全てのファンに届けるのは難しいです。チケッティングシステムの構築で協力したり、チケッティング会社のプラットフォームを利用したりすることで、1試合で2~3万枚ものチケットを売ることができるのです。
従来のスポーツ周辺の産業に加え、近年注目されているのが5Gをはじめとしたテクノロジーとスポーツを掛け合わせて生まれる新しいサービスです。特に最近はプロスポーツチームと大手通信キャリアが提携し、コロナの影響で球場・スタジアムに足を運べないなか、より充実した試合の観戦体験を提供するための取り組みが進んでいます。
このように考えると、間接的にスポーツに関わる事業はたくさんありますね。
- 放送局、テレビ局、OTT事業者、アナウンサー
- 新聞社など各メディア
- チケット会社
- グッズ製造会社、通販会社
- スタジアム向け飲食
- 通信会社、IT関係の事業者
など
スポーツの価値を活用して、自社のマーケティングや販売促進に活かす
最後は、スポーツに「従事」するというよりは、スポーツを「活用」するという関わり方です。イメージしやすいのは「スポンサーシップ」でしょうか。
プロスポーツが持つ大きな価値が、「集客」や「注目度」です。レギュラーシーズンでは、1日で6つの会場それぞれで2~3万人を集めるのです。そのうえで、現地に足を運べないファンは、テレビやネットで試合を「リアルタイム」で視聴しています。そこに、広告枠を設けて企業に提供し、企業としては認知を広げられるのが「スポンサーシップ」ですね。
従来のスポンサーシップは、その費用対効果をしっかりと算出するのが難しく、景気後退とともに頭打ちになりつつある、という話もあるようです。ある意味「広告枠」としての意味合いが強く、実際のプロスポーツチームの「プロダクト」でも枠売りのようなラインナップになっていると耳にしたこともあります。
「露出」単体の価値への疑問が高まるなか、近年多くの球団で行われているのが「アクティベーション」と呼ばれる施策です。単なる広告ではなく、たとえば試合前のスタジアムでブースを出し、キャンペーンや試供品の提供など、企業がより主体的にマーケティング活動を行います。特に、球団が持つファンの属性データなども参考にしながら、ターゲットとする層がマッチする企業にとって、非常に有効な場となっているでしょう。
そして、このような関わり方は、極論するとあらゆる企業から可能でしょう。
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スポーツビジネス界に新卒で飛び込むことの是非
スポーツビジネスにこれだけ注目が集まっており、もともとの「スポーツ」の人気と相まって学生の間でも新卒でスポーツビジネスを志す人が増えていると言われています。一方で、「給料が低い」「土日も休みがなく激務」といったイメージが先行し、迷っている学生が多いのも事実でしょう。
スポーツビジネス界においても、学生が新卒で就職することの是非は頻繁に議論されているようです。そもそも、新卒でスポーツビジネス界に就職していない筆者が言うのも微妙なところですが、私見としては新卒でのスポーツビジネス就職も今の時代は全然アリだと思っています。
大きな理由としては、20代での「成長」を考えた時に、スポーツビジネス(特に球団・クラブ)に就職すると、その機会がたくさんあると思うからです。若いうちの給料が低いかどうかはあまり重要ではなく、大企業のように組織として整ってなく、自分からどんどん手を挙げて挑戦できる環境もあるスポーツクラブへの就職は将来のキャリアを見据えても素晴らしい経験になるのではないでしょうか。むしろ、現代は大企業の仕組みに乗っかる方が中長期的に見てリスクが高いと思います。
極論すれば、どの会社でも通用する人材になるという観点でも、ベンチャー気風で成長機会が多く、かつ大好きなスポーツ事業に関われる会社であれば、新卒入社は全然アリでしょう。
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スポーツビジネスとの関わり方は、ひとつではない
私もそうですが、スポーツビジネス界で働いてみたいと思いつつ、「給料が低い」「残業多そう」などマイナスなイメージが先行し、二の足を踏む人も多いかもしれません。その場合に有効なのが、スポーツに間接的に従事する、あるいはスポーツを活用する立場としてまずは関わってみる、という方法です。そこで、実際にメディアやネットで言われていることと、体感することのギャップも見えてくるでしょうし、その後のキャリアの判断材料となるでしょう。
あるいは、最近は副業/複業としてスポーツビジネスと関わることも可能になっています。スポンサーシップの営業なども行えるので、まず副業/複業という形で始めてみるのもよいかもしれません。
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